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才能や可能性を見つけ出し引き出す!信じて待つことの大切さとは?『NPO法人コミュニケーション・アート』代表、城戸佐和子

現在、アジア美術家連盟会員、ローマ芸術家協会名誉会員、「二科会」所属、松澤造形教室主宰、福岡大学非常勤講師などアートの分野で幅広い活躍をされている城戸佐和子さん。
城戸さんはその傍ら障がい児教育アートディレクター、障がいのある人達のアート活動支援グループ「NPO法人コミュニケーション・アート」の代表理事など障がいがある生徒の才能を引き出し個展をプロデュースもされている。

今回は城戸佐和子さん(以下敬称略)にどのように人の才能や可能性を引き出しているのかに迫りました。

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5分も座れなかった子どもが国内のコンクールで賞を獲得できた理由とは?

ーなぜ障がい者児教育アートディレクターなど障がいのある人達に関わるようになったのでしょうか?

城戸:友人の知り合いの子どもさんが、重度の自閉症だったんです。

そのお母様から、子どもに絵を教えて欲しいと熱心にお願いされて、一度お会いすることになったのですが、
最初会ったときは、正直難しいと思いました。

ーそれでも引き受けたのはなぜでしょうか?

城戸:私の性格上、そこで子どもの可能性をあきらめたくはなかったんです。
お母さんの熱意にも押されました。
それで、ダメ元で引き受けることにしたんです。

最初は、5分もじっと座ることができないぐらいの集中力。
まずは、まるで絵に関心がない子どもだったので、絵を描くことに興味を持ってもらう必要がありました。
そこでその子の興味を探ると、粘土細工が好きだってことを知ったので、あらかじめ紙粘土で形を作ってもらい、
「今日は、乾いた紙粘土に、赤い色をを塗ってみようね〜」と投げかけてみました。
簡単ではあるけれど、アートの基礎になるようなものを、少しずつ身につけさせたいと思ったのです。

すると、最初5分しか座れなかった子が、10分、30分、1時間と集中できるようになって、
そして3年後にはチューリップなどの花を線描、着彩することができるようになりました。
厳密に言うと、物を見て描けるようになるまで、3年もかかったのです。
そして、5年後には、コンクールで賞を受賞できるようにまでになっていきました。

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信じて待つことの大切さ

ー最初5分だけしか座ることができなかった時から比べるともの凄い成長ですね。
城戸さんはコンクールで、子どもさんが賞を受賞した時に、どのようなことを感じましたか?

城戸:その子と接する前までは、その子が自閉症だけでなく重度の知的障がいも伴なっていたので、正直言って成長は微々たるものなのかもしれない、
大幅な成長など難しいものかもしれないと思っていました。
しかし、今では、障がいのある子は、遅れてスタートしただけで、後からいくらでも成長できるし、むしろ、後天的な発達の方が大きいことを確信しています。
この子たちの芸術性から、私たちが学ぶものもたくさんあることに気付かされたのです。

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太田宏介さん作、F8「犬の親子とチューリップ」

 

ー実際にやっていく中で、発見したことも多かったんですね。
それでは、城戸さんのアートディレクターとしての役割は、どのようなものでしょうか?

城戸:私の仕事は、彼らの才能や可能性を見つけ出し、作品制作を通して、精神的なものも含めて、生きる柱をつくるお手伝いをすることだと思っています。

芸術といっても、切り絵や粘土細工、ペーパークラフト、アクリル絵画や水彩画など、画材も様々あり、人によって得手不得手があります。
だから私は、一通り色んなジャンルのアート体験をしてもらったあとで、その子に合った、キラリと光る才能を生かせる素材を見つけ出し、
時間をかけて、本人と一緒に、少しずつ絞り込み深く掘り下げていくのです。
時には、厳しく伝えもします。障がいがあるからといって、お世辞でほめたりはしませんし、専門的なこともきちんと噛み砕いて教えていきます。

例えば、自閉症の子は一定の間隔で点や線を描くというような構図をとることが好きなんです。
ただ、好きなことをそのまま続けていくだけでは、一生同じことの繰り返しだけで、すぐにアートの限界がきてしまいます。
自分の絵に対して、とやかく意見を言われることは、本人には、とても辛いことかも知れません。
自閉症の人達は、意見を言うと、あたかもその人の人格を全否定されているかのような錯覚に陥ることが多々あります。

強要はしませんが、作品に関しては、あくまでも私はこう思うけど、どうかな?って、本人に聞きます。
だから、バトルになることもあるんですよ。作品を作るにあたって、どうやったら、自分の作品がよくなっていくのか、考えながら制作していくのです。
いろんな関わり方があるんでしょうけど、私は、同じことの繰り返しではなく、一生成長していって欲しいと思っているからです。

とにかく、伸びる可能性を「信じて待つこと」を大切にしています。
私も彼ら出会うことで、生きていく上で大切なものは何かを気付かせていただき、私自身のの人生をより豊かなものにしていただいているのです。

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三位一体で挑戦する

ー最後に家族の関わり方をお伺いしたいのですが、家族はどのような役割を果たすことができるのでしょうか?

城戸:障がいのある人がその力を伸ばしていくためには、、一緒に新しい領域に挑戦する伴走者としての指導者と、その行動を支える家族や友人の3者がいることが必要です。

支える人はサポートされる人を肯定し、
信頼することでサポートされる人の後押しをする。
それが家族の役割の一つだと思います。
ただ、口先で言うのでではなく、いいものができた時には、心から感動してほめること。
そのためにはちょっとした変化に気づくことが求められます。

親があきらめなければ、子どもはどこまでも伸びます。
逆に親があきらめた瞬間、ピリオドなんですね。
人によって、何年かかるかはわかりませんが、歩みを止めなければ、必ず目標地点まで、辿り着く時が訪れます。
だからその過程を楽しんでほしい。そして心から喜んでほしいですね。

ー城戸さんのお話を伺うなかで目の前の人への愛情を感じました。
最終的には親の存在が大きく子どもに大きく関わってくるのですね。
子どもたちだけでなく、関わるお母さんたちのこと理解して付き合っていることも様々なエピソードから伝わってきました。
城戸さんありがとうございました。

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城戸佐和子さん作、F100「水脈8」

 

編集後記

今、短期間で成果を求められることが当たり前になっている。
城戸さんの関わり方というのは、時間かけて人に向き合い引き出していくもの。
そうやって持ち味を引き出すためには、その人の良い部分を見極めるために引き出す側も挑戦し続ける必要があるのだと思いました。

城戸さんのように専門性と人間性の二つが求められると感じました。
才能や可能性を引き出すためにできることのヒントになったのではないでしょうか?

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